るね

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百合(GL)です。苦手な方は回避願います。
900字くらいです。
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【君と】【桜】【好きだよ】





仲の良い女友達と二人、花見に来た。
「もう葉桜じゃない」
「その分、人が少なくていいでしょう」
「でも満開の時に見たかった!」
「しょうがないよ。今日しか予定が合わなかったんだから」
なんて言い合いながら、桜の木の下にレジャーシートを広げて。手作りじゃないけど、お弁当も広げた。

淡い色の花弁が少しの風でひらひら舞って、お弁当の唐揚げの上にも落ちて来た。
盃でもあれば風流を気取れたかもしれないけど、この公園、花見はできても飲酒は禁止だ。見回る職員の姿もある。酔っ払いに絡まれることがないのは気楽で良い。

天気が良くて、ぽかぽかと暖かくて。
だからと言ってウトウトし始めたのは自分でもどうかと思ったんだけど、眠気に勝てなくて。
完全に寝てはいないけど、眠くて眠くて動けない、そんな時間が長く続いた。

友人が「寝ちゃったの?」なんて聞いてきたけど、返事もできずにいたら。
そっと頭を撫でられた。
ああ、花弁が落ちて来たのかな。
そう思ったのに。

髪を梳くみたいにまた撫でられて。
「好きだよ」
切なげな、何かを堪えるような、少し熱の篭ったその呟きが、はっきり聞こえた。

驚いて意識が浮上したものの。何を言えばいいかもわからなくて、つい、寝たふりを続けてしまった。

「来年も君と花見に来れるかなぁ」
なんて、なんだか寂しそうに言われて。
私も、また来年も来たいと思った。
寄せられた好意が嫌ではないんだ。
そう自覚したら駄目だった。

頬が熱い。耳も熱い。体温がぎゅうっと顔に集まって、きっと真っ赤になっている。

「え……もしかして、起きてた……?」
誤魔化しきれずに視線を上げたら、相手の顔も真っ赤で。
「うん。なんか、ごめん……?」

私が『ごめん』なんて言ったから、勘違いさせたらしく。
「そうだよね。女同士で」
「あ、いや。そういう『ごめん』ではなくて」
「え?」

「寝たふりしようとしてごめん。私も結構君が好きです……」
そう言ってから、なんだか、これだと私の方から告白したみたいだなと思ったら、ちょっと悔しくなった。

「さっきはウトウトしてたから、もう一度聞かせて」
「あ……え? いや、その、ええと」
結局。
ちょっとヘタレな彼女にちゃんと告白させるまで、15分もかかってしまったのだった。



4/5/2025, 12:31:03 PM