強い光に照らされ、ステージ上で輝かんばかりの笑顔をつくるあの子のことをここの所、僕は思い出しては頭から消す作業を繰り返していた。
手に多くの賞状やトロフィーを抱え、はじけるような笑顔のあの子を僕は舞台袖からしかあの時は見ることが出来なかった。
しかし、敗北感に包まれた僕の心を、再び動かしてくれたのはやはり君だった。
鍵盤を叩く音に混じった、微かな吐息が会場を彩る。
圧倒的な才能の片鱗を見せるあの子に、僕はひどく惹かれてしまった。
あの子の演奏があっという間に終わると、舞台上からはけてきたあの子と、八会ってしまった。
するとあの子の表情が途端に崩れ、驚きが現れつつも微かに聴こえる程度の澄んだ声で話しかけてきた。
「毎年コンクールで私達会ってるよね…頑張れ!」
清涼な風を思わせる声に反して、可愛らしい喋りをすることと、突然話し掛けられたことで驚いたが、答えは反射的に返してしまった。
「…ああ、頑張るよ…」
自分でも随分と愛想の無い答え方をしてしまったと反省しつつ、ステージ上の眩しい光に目を細めた。
(ほんと…僕じゃ敵わないな)
なんて頭では考えつつ、自分の心がひどく高揚していることが分かってしまった。
演奏の最後の余韻まで楽しむと、あの子と同じように舞台袖にはけていく。
するとそこには、あの子が待っていた。ふと、ふわふわとしたよく手入れにされている髪の毛に目がいく。
あの子の柔らかな笑顔に自然と口角が上がる感覚がした。
自分でも、不思議と今までで一番いいコンクールになったと心の底から思えた。
君と並んで手に抱えた賞状とトロフィーには、特別な何かを感じた。
その日は、僕の人生の中で一番眩しい光を浴びたように感じて、頬には一筋の道が残った。
#星を追いかけて
7/21/2025, 2:57:03 PM