【美しい】
綺麗なものには刺がある。鏡を見てはそんな言葉を思い出して下を向く。寒すぎる朝に冷たい水で顔を洗ってそれなりに顔を彩る。私は可愛いの。綺麗なの。美しいの。作った可愛いだとしても私が可愛ければそれでいい。それ以外には何も残らない。この鏡に映る顔以外何も、残らない。
「行ってきます。」
不機嫌な自分は可愛くない。どうにか声を絞り出して1人の部屋に向けて告げる。外の空気もひんやりとしてる。いくら綺麗だからと言って、人からの視線が集まるわけではない。ナンパをされるわけでもない。ただ、なんとなく。今日は違うことが起きる気がする。まぁ、きっとそんなわけないか。
「肩を落としてどうしたんですか、美人が台無しですよ。」
誰がが誰かに向けたキザなセリフ。そんなこと言われる人もいるんだな。小さい頃、言われたなこんなキザなセリフ。可愛い顔が泣いちゃってるって子どもながらに可愛い表現。
「無視しないでくださいよ。この声忘れたんですか?」
なんか、私以外いなそうな朝の寒い道。なんとなく、振り向くか。いや、やっぱり見たことない顔だよ。覚えてもない。違うことが起きるなんてあるわけもない話か。私が美しいばかりにきっと狂わされて存在しない記憶を頼りに声をかけてしまったんだな。
1/16/2026, 3:22:05 PM