〜終点〜
どれだけの時間が経っただろうか
いくつものトンネルを越え
嵐の日も快晴の日も
来る日も来る日もこの電車は走り続ける
途中の駅から人が乗っては降りていく
どれくらいの人を迎え入れ
どれくらいの人を見送っただろう
一緒に乗り合わせている乗客を眺めていると
隣に座っていた祖母の声がして振り返る
「次の駅で降りるわね」
予想していなかった言葉に戸惑う
「どうして!?そんな…急に…」
取り乱している私を諭すように祖母は言う
「次の駅が私の終点なのよ」
堪えていたものが一気に溢れ出る
「…一緒に降りる…置いていかないで…」
泣きじゃくる私に祖母は困ったように微笑んで
「あなたの終点はまだ先でしょ?
たくさんの風景を見て来なさい」
背中を摩ってくれる祖母の温もりを感じ
また涙が溢れ出た
祖母越しに駅のホームが近づいているのが見えた
残された最後の時間
その姿を焼きつける
涙で滲む目を何度も擦り目一杯の笑顔を向ける
「いろんな風景見て来るね。
またおばあちゃんに教えてあげるから」
まだまだ側にいたい気持ちをよそに
また電車は走り出した
8/10/2023, 4:26:02 PM