12月の忘年会シーズン。
弊社も例に漏れず、職場近くのホテルの宴会場を貸切り、部署の垣根を越え労いの場が設けられている。
乾杯の折には行儀良く部署同士で固まっていたテーブルも、時間が経てば皆が席を立ち、顔馴染み同士が同じ席に着く。
他部署の部長達に挨拶が終わり、俺はグラス片手に自分の席に戻ろうとした。だがそれは陽気な聞き馴染みのある声に引き留められる。
「設楽!設楽ぁ!」
来い、と手招きしているのは同期の豊田。ニヤニヤした豊田の横には奴の部下の根田が居る。いつもの喫煙所メンバーだ。
だがいつもと違い根田が机に突っ伏している。酔い潰れたのだろうか。苦い顔で俺は彼らに近づく。
「どうした。大丈夫か?」
「アホだ。阿保がいるぞ。話聞いてやってくれ」
他人の不幸は蜜の味、と言いたげなだらしない笑顔で豊田が言う。
「じだら”ざん”、聞いてくだざいよぉ」
鼻声で泣き喚く根田の話をまとめるとこうだ。
—付き合い出して5か月の彼女が、クリスマスに会えないからと先日プレゼントを要求してきた。
それはブランド物のバッグで、まあまあな金額だったらしい。だが冬のボーナスを見越して根田は張り切って彼女の為に奮発したそうな。
だが、渡したその日から彼女とは音信不通。当然バッグも持ち逃げされたも同然な状況。
「な?アホだろ」
「見事に集られたな。高い勉強代だったと思え」
笑い過ぎたのか豊田が嬉しそうに俺に問うた。俺は呆れて溜息混じりに根田に言った。
「というか付き合って数ヶ月でブランドほいほい渡すなよ。甘いんだよお前は」
「正直チョロ過ぎる。チョロ甘だな」
だっはっは、と下世話な笑い声で豊田が笑い飛ばした。
「じゃあどうすりゃ良かったんすか?!」
投げやり気味に泣く根田に、俺と豊田は一度目を合わせ、容赦無く告げた。
「別れて正解」
≪どうすればいいの?≫
11/22/2024, 12:47:47 AM