中学生

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夜七時半、残業をし事務所を出た。中にはまだ中西さんが居るから社がある四階はまだ明るい。中西はタバコ休憩を長く取るがそれ以外は良い人だ。

錆びた非常階段の手すりを触るとペンキが剥がれて下に落ちていった。それを見て俺はなぜだか人間もペンキも愚かだと思った。

そのまま階段をぬけて地上に足が着くと、いつもの道に違和感を覚えた。普段と何かが違う。向かいの一軒家の表札が新しくなっているのかと思って注意深く見てみるも前からこの表札だったようにも思える。

俺は深く考えずにポケットに手を突っ込んで気のせいだろうと思いながら歩き始めた。

しかし何でも不思議な事に人間は一度警戒すればもう元のように信用することができなくなる。

俺は無意識のうちに周りを見たり、誰かにつけられていないか確認したりしながら大通りにでた。

何気なく空を見上げると点々と少し光る星が散らばっていた。俺はそれをみて妻が作った歪な形の金平糖を思い出していた。

空からゆっくり視線を戻すと、電柱に付けられたライトの下に男が立っていた。俺は特に気にするでもなく通り過ぎようとするが男から俺に声をかけてきた。
俺は横を見て、二十代後半くらいの男を見ると、顔の額にアザがあるのに気がついた。

「なんですか?」

俺がそう返事をすると男は間を空けてから言った。

「た大変なんです。あの、ひ、人が死んでて」

「え、本当ですか?」

俺は直感的にすぐ逃げるべしだと悟った。確実に面倒事に違いない。

しかし人が本当に死んでるとなると、後で防犯カメラに写った俺を見て、なぜあの時逃げたのかと問われるくらいなら、俺は理性に頼るべきだ。

「こ、こっちです。」

俺は少し焦り始めながらも男の後を追う。この男が演技をしているというなら、顔にアザがあろうとも有名な映画に出られるだろう。

昼と比べて人通りが少ない大通りから2本ほど中路にいき、左に曲がった先にある路地の奧にそれらしい大きな物が下に落ちていて鳥肌が立った。

俺は男の後ろをついていく間、こんなことを考えていた。

この男は死んでいると言ったが、なぜそれが一般人にわかったのだろう。それ程見るも無残な姿になっているとでもいうのだろうか。

その考えは合っていたと言って良いだろう。被害者の腕は赤く爛れ腐った桃のようになっていて、金色の腕時計がヤケに目立つ。目は開きっぱなしで腹に何回も刺された後があり、足がありえない方向に曲がっている。

俺はこれを見た瞬間吐き気がして口を抑えた。
確実に死んでいる。それも殺人だ。すぐそこらへんに犯人がいるかもしれない。
男に警察は呼んだのと聞いたが男はまだ呼んでいないという。

俺はすぐ警察を呼んで、壁にある自分の影を見ながら深呼吸をした。


しかし男は混乱していたとはいえ、なぜ警察も救急隊員も呼ばず通行人に助けを求めていたのだろうか。

それにこの男は「人が死んでいる」ことに動揺しているのであって、この無残すぎる死体に対しては全くと言って良いほど動揺していない。

実際男は第一発見者として最初に見たのと、今回のでこの死体を見るのが二回目という事になるが、死体には目も触れず俺の顔ばかりみてくる。

考えたくなかったが、この男が犯人なんじゃないかと思い始めて不安に思っていた頃だ。

サイレンの音が聞こえ間もなく警官が来た。俺は少し安堵しつつも事の経緯を話す。しかし当たり前だが俺より男の方がいい情報を持っているだろう。


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続きは次回、思いついた時に!













10/19/2024, 1:33:05 PM