君の目を見つめると、君は裸になる。
君は自ら、心の服を脱ぐ。
良い人のふりも、上司の顔も辞めてしまう。
難しそうな顔でやってるふりの仕事も放り投げてしまう。
「出た、その目。その見透かしたような目が苦手なんだよ」
拗ねたような、何か諦めたような顔で、あなたはいつもそう言うけど、嘘ばっかり。
本当は私のこの目が、大好きなくせに。
見透かされて、自分に嘘をつけなくなるこの瞬間が、本当は好きでたまらないくせに。
私は嘘がつけない。男性経験もない。
ただただいつも真っ直ぐに全力で生きてきた。
そんなまっさらな私を汚すことが、最高の背徳感だったんだろう。
振られたことすら、騙されたことすらない私だけど、あなたがろくでなしの嘘つきだってことは見抜いてた。
プライベートを一切語ろうとしないこと。
写真を撮られるのを極度に嫌がること。
名前を名乗る時、いつも苗字しか言わないこと。
うまくやれてると思ってるかもしれないけど、まるでバレバレ。
それが、寧ろ可愛く見えてしまったのかもしれない。
うん、多分そうだ。きっと、そう。
私が遅くまで仕事しているとき、名指しでひどく叱られたとき、あなたはたった一人遅くまで残って、励ましてくれる。笑いかける。
いつも嘘つきな顔なのに。
それなのに。
そういう時のあなたは、本当に優しい目をしてる。
だから狡いんだ。
それに甘えてまんまと弱さを見せた私が悪い部下だったの?
いつからこうなったんだろう。
私の身体を弄ぶ彼は、私を苛めて昂っている。
強引に抱き寄せたくせに、あなたの方が鼓動が速い。
耳元で囁く言葉には、湿った吐息が混ざって隠せない。
頸に熱を感じて全身が甘く痺れる。
「ねぇ……」
その目を見れば、その昂りが、余裕のなさが演技ではないことが分かる。
私はその様を見て、最高に興奮するの。
サディストはどっち?
なんて、頭のどこかで考えるけど、そんなことどうでもいい。
自分が何番目の女かなんて考えたくもない。
愛だとか恋だとか、そんなことも考えたくない。
あなたに脱がされながら、
私はただ、あなたの心の服を脱がせる。
君の目を見つめると、君は裸になる。
4/6/2024, 11:45:14 AM