駒月

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 どの女子も好きの次、二言目にはあれが欲しいだの、これをプレゼントしてだの言ってくる。
 まあ社会人で稼いでるし、かわいい彼女の望みなら叶えてやりたいからいいんだけどね。

「おーい、この書類追加で頼むわ」

 同僚からナイスパスが来た。今日はクリスマスイブだっていうのに残業だ。
 本当に残念でならないけど、彼女にドタキャンの連絡をしなければ。プレゼントを買ってないからちょうどよかった。いい加減うんざりしていたから、あっちから振ってくれればいい。俺は仕事で書類といちゃついていた方がマシだと思う。
 秒で『ごめん、残業で今日は会えない』とLINEを送ると既読だけがついてスマホは鳴らない。スルー上等だ。

 黙々と仕事をこなしていると、デスクの上に置いたスマホからバイブ音がした。
 彼女からか、面倒だな、と画面を見ると家が隣の幼馴染みからだった。一度は付き合って別れたが、家族ぐるみで仲が良いためたまに食事をしたりしている。

『早く帰って来い』

 女子なのにスタンプなし、一言だけの命令LINE。幼馴染みらしいとくすりと笑う。
 ちょうど一区切りついたからこのまま帰ってしまおう……そう思って外へ出ると、幼馴染みが寒そうに缶を手にして待っていた。

「遅い」
「ごめん。ていうかいつから待ってた?」
「さっき来たところ。あげる」

 ぬるくなった缶コーヒーを手渡された。嘘が下手だねぇ。そして久しぶりに誰かに物を貰った気がして笑ってしまった。

「何にやにやしてんの?」
「ふふ、プレゼントありがとう。ちょうどコーヒーが飲みたかった」

 幼馴染みは「変なの」と言うとヒールを鳴らして歩き出した。

「クリスマスのディナー、作りすぎたから呼んで来てって……うちの母さんが言ってたから。ここを通ったのは偶然だから、勘違いしないでよね!」

 ツンデレが完璧で余計にやけてしまう。俺にはこの缶コーヒーで充分なんだけどな。
 幼馴染みの数歩後ろを追うように、足取り軽く帰路につく──そんなクリスマスイブ。




【プレゼント】

12/23/2023, 10:55:59 AM