ほろ

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ふと中庭を見ると、しゃがんで土いじりをする生徒が見えた。もうすぐ昼休みも終わる時間だが、一体何をしているのだろう。
「おーい、昼休み終わるぞー」
声をかけると、生徒はパッとこちらを振り返って、手をブンブン振った。その手には何かが握られている。
なんだ、あれ。よく目を凝らすが、さすがに距離があって見えない。そのことに気付いたらしい生徒が、駆け寄ってきた。
「先生、見てみて!」
「何それ。花? だよな?」
「そ。あげる」
ん! と差し出された花をとりあえず受け取る。小さくて青い花。こんな花が中庭に咲いていたなんて、知らなかった。
「これなんて花?」
「……」
「え、なんで急に黙るんだよ」
「……俺も知らないんだよね。せんせー、調べたら教えてよ」
じゃ、教室戻るね。
生徒は走ってその場からいなくなった。俺の手に小さくて青い花だけが残される。
「……絶対知ってるだろ、あいつ……」
まあ、調べるくらいなら自分でやってもいいか。
花をクルクル回しながら、俺は職員室に向かった。

青い花の名前と花言葉を知り、頭を抱える5分前の話である。

2/2/2024, 1:31:26 PM