紗夢(シャム)

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【おうち時間でやりたいこと】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

4/25 PM 4:50

「もうすぐゴールデンウィークだね」

 教室で宵の部活が終わるのを
 待っていると、暁がふと呟いた。

「そうだな」

 読んでいた文庫本を閉じて答えると、
 暁が目を合わせてくる。
 
「真夜(よる)くんたちは、
 家族でお出かけしたりするの?」
「いや、そういう予定は特にないよ。
 暁は旭(あさひ)さんとどこか行くのか?」
「うーん……せっかくの連休だから、
 お母さんにはおうちでのんびり
 過ごしてもらいたいかな~」
「――でも、暁は行きたい所がある?」
「……真夜くんは鋭いねぇ」

 実はそうなの、と内緒話でも
 するような小さな声で暁は囁いた。

「今年ってほんとにすごく
 暖かいでしょ? そのせいで
 もうバラが見頃なんだって。
 だから、ローズガーデンに
 行きたいなって思ったの」
「ああ、それはきっと宵も見たがるよ。
 一緒に行こう」
「うん……! ありがとう、真夜くん」

 暁は、それこそ花が咲くみたいに
 ふわりと笑う。
 喜び方がいつも素直だ。

「あ、けど、GW後半はお天気が悪い
 みたいだね。結局、おうちの中で
 過ごすことの方が多くなりそう」
「そうかもしれないな。家でやりたい
 ことも考えておけばいいよ」
「おうち時間でやりたいことか~……。
 ――そうだ、真夜くん、提案なんだけど」
「早速思い付いた?」
「うん。あのね、真夜くん、
 天明(てんめい)くんをお泊まりに誘って
 男子会してみるのはどう?」
「……?」

 思いも寄らない発想過ぎて、
 なんて答えればいいか分からなかった。
 天明と話すこと自体は、苦に感じない
 とはいえ……男子会?

「そう言われても、オレは一般的な
 男子高校生がするような話題を
 持ち合わせてないと思うけど」
「そこはほら。『ご趣味は?』とか、
 『家族構成は?』とか『朝食はご飯と
 パン、どっち派ですか?』とか!」
「それだと男子会っていうより、
 お見合いみたいな話題じゃないか?」
「まぁ、今後の宵ちゃんのための
 リサーチってことで。そうなると、
 『猫は好きですか?』も外せないね!」

 宵のため。だとしたら、オレには
 やらないという選択肢は存在しない。

「他には何を話せば?」
「えーと……宵ちゃんのためでもあるけど、
 真夜くんと天明くんの親交を深めるのも
 目的だから、真夜くんが気になることを
 聞いてみるといいんじゃないかなぁ。
 『好きな探偵は?』とか」
「天明は然程ミステリーに興味なさそう
 だけどな。――ちなみに、暁は何か
 聞いてみたいことはあるのか?」
「『マックのナゲットのソースは
 バーベキューとマスタード、
 どっちが好き?』かな!」
「……一応、確認してみるよ」

6/15/2023, 1:45:10 PM