トロッコ問題をご存知だろうか。暴走するトロッコの先に線路が二股に分かれていて、片方の先には一人、もう片方の先には五人がいる。「あなた」はトロッコの行き先を操作することができる。その時、一人を殺すか、五人を殺すか、どちらを選ぶかという問題だ。
これを先日、アイスブレイクとしてゼミで出してみた。皆、一人のほうが罪の意識が軽くなるとか、五人が犯罪者ならそちらを選ぶとか、子供と大人なら大人を選ぶとか、そのような議論に終始していた。
一人、議論に加わらない学生がいた。授業態度は真面目な彼が、サボっているとは思い難い。そう思ったので、議論の時間のあと、私は彼を指名して、考えを発表させた。
彼は簡潔に答えた。
「自分がトロッコの前に出れば六人とも助かります」
私は戦慄した。
(お題:誰かのためになるならば)
7/26/2024, 11:05:36 AM