のぞみ

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言葉はいらない、ただ・・・・


「言葉はいらない、ただ私を愛してるかどうか知りたいだけなの!」


ついに言ってしまった。
お母さんは目を開いて固まっている。


お母さんは再婚してから変わってしまった。

4年前お父さんが亡くなってしまって悲しみながらも2人で頑張ってきた。
それなのにそれから2年、お母さんは再婚する男性を連れてきた。
別にそれは良かったんだ。お母さんは幸せになるなら。
でも、それからはお義父さんとばかりいるようになって私のことは後回し。空気のように扱われる。
だけど今日限界になって寂しさが限度を越えて言ってしまった。


別に愛してるとか、私の大切な娘なのとか特別な言葉はいらない。
ただ、前みたいに学校に行く時は"行ってらっしゃい。"
とか、前みたいにつまらないことで笑い合いたかった。
私を頭の片隅にでも置いといてほしかった。

お母さんが必死なのも分かってたから私だって必死に我慢してた。



でも、お母さん。

もう私のこといらないんじゃない?
お義父さんだけそばにいれば嬉しい?
それどころか娘との思い出なんて忘れてしまった?




前のお母さんに戻ってよ。


そんな言葉は言えるわけなかった。




「ごめんね。私邪魔だよね。ごめんね。高校卒業したらすぐ出て行く「何言ってんの!そんなわけない!」

私の言葉を遮ったお母さんは怒ったような悲しいようなそんな顔をしていた。


なんでそんな顔するの・・・・・?


「ごめんね、綾。綾のこと大事な娘だと思ってる。
ただ精一杯だった。優さん(お義父さん)のこと支えなきゃって妻として側にいなきゃってなったらいつの間にか綾との時間がなくなっていた。
お父さんが亡くなってから2人で支え合っていこうって笑って楽しく生きようって約束したのに。
母親失格よね。ごめんなさい。」


お母さん・・・・・
分かってたよ。お母さんが必死なこと頑張ってること。
でもね、



「お母さん。毎日私との時間を作ってほしいなんてわがままいわないよ。だけど、特別な言葉なんてなくても一緒にいる時間がなくても、ただ私のことを思ってくれてるだけで十分なのっ。
私はお母さんが幸せじゃなきゃ嫌だから!
だからさ?私との時間少なくてもいいから私のことも頭の片隅に置いといてほしいな。少しでも前みたいに笑う時間があったら私はそれで満足!」


頬から涙がつたる。
それはお母さんも同じだった。


「ありがとう綾。こんな、私を母親と言ってくれるならもう一度、チャンスが欲しい。」


「もちろんだよ。お母さん。」




私達はお互いの真っ赤になった目を見て笑い合った。


                       完

8/30/2023, 12:45:16 AM