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凍てつく鏡

鏡よ、鏡。
魔法の言葉を呟いて、一体何を問うのでしょう。
けれどもう、鏡は答えを教えてくれないよ。それどころか、何かをうつすこともないのだろう。

鏡の持ち主は疲弊し、意識も肉体も放棄した。
迷宮を彷徨っていたようなその人の苦悩は、答えはおそらく鏡が教えてくれただろうに。
あるいは、それが耐え難かったのかもしれない。答えなど、知りたくはなかったのかもしれない。
問いを口にしたのは遠い昔。しかも、無邪気な子供の頃。
しかし最期に呪文を囁いて、一体何を問いたかったのでしょう。

氷の膜がへばりついて、年々厚さが増していく。
何もかもをうつしだすかのように思えたその鏡さえ、長い年月には敵わないらしかった。

鏡よ、鏡。呼びかけても、問いにこたえることはない。

12/28/2025, 8:53:34 AM