・まだ続く物語
「そういえばシンデレラさん、離婚したんだってね?」
うららかな春の午後、かつて村の英雄であった中年おじさんは、傍の女性に話しかけた。
「ええ。この歳まで連れ添ったのに、どうかと思いましたけども、王子様のパワハラ癖が年々ひどくなってきまして。昔、国中私を家来に探させたってのも、今思えば、ねえ?」
答えるのは、かつて国母であった初老の女性、シンデレラ。年をとっても衰えることのない美貌と知性は、今なお、周囲の男性を惹きつけてやまない。
「あー…なるほどね。確かに家来を蔑ろにするのは許せないな」
自分ごとのように怒る中年おじさん…その真意がどこにあるのかは、言わずもがな。
「桃太郎さんはみんなから慕われていますからねぇ。犬さんたちはご健在?」
頬を赤らめながら、中年桃太郎が続ける。
「ああ、もちろん。ちょうど明日、改心した鬼たちも一緒に同窓会をやるんだけど…」
シンデレラさんも来ないかい?その言葉は、尻すぼみになって消える。ふふ、っとシンデレラが笑う。
「いやですわ」
だって。
「二人がいいわ」
名前の通り、桃色に染まる桃太郎のほおを愛おしげに眺めながら、シンデレラは考える。
そういえば最近、お菓子の家の魔女が殺されたらしい。初デートはそこにしよう、なんて。
5/30/2025, 2:30:55 PM