君と最後に会った日
僕と彼女は同棲していた
いずれは結婚を…と考え
指輪を用意してプロポーズを
彼女の誕生日にしようと考えていたのだが
彼女の様子が日に日におかしくなっていった
決定的だったのは
僕を見て「あなたは私のお兄さんですか?」と
聞いてきたことだった
病院へ連れていくと
若年性の痴呆だと言われた
僕は仕事を辞め、彼女の面倒をみることにした
でも長くは続かなかった
金銭的に厳しくなったのである
彼女の両親は彼女を引き取りたいと
申し出てきた
僕にも『娘のことは忘れてほしい』と
告げてきた
彼女は両親に引き取られ
僕は再就職したものの
彼女を忘れることが出来なかった
どうしても彼女に会いたい
例えそれが最後になろうとも
その思いだけで彼女に会いに行った
一年ぶりに会った彼女は痩せ細り
目も虚ろだった
彼女は、良く分からない話を繰り返していた
僕は話を遮るように
彼女に「渡したいものがあるんだ」
そう言って前に買った指輪を
左手の薬指にはめた
その途端
彼女の目から涙が溢れてきた
なぜ泣いているのか彼女自身
理解できていないだろう
僕は思わず抱きしめた
それから僕は再就職した会社を辞め
彼女の近くの会社に務めた
これからの日々の中で
彼女の記憶は薄れていくかも知れないけど
1日1日を大切にしていきたい
6/26/2024, 3:41:40 PM