るね

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1,000字程です。ちょっと長いかも。
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【太陽の下で】


 芝生に寝転がって昼寝をしてみたいのだと君が言った。本格的な冬になる前、広い場所、晴れた日に太陽の下で。日向ぼっこをしながらうとうとするのは気持ちが良さそうだ、と。
 だけど実際には、公園で眠りこけてしまったら荷物を盗られるかもしれないし、もしも知らない人にジロジロ見られたりしたら気分が良くない。寝顔なら尚更。

「だから一緒に居て欲しいんだけど」
「……それが今年の誕生日プレゼント?」
「そう。寝て起きるまで隣で見張ってて」
「まあ、いいけど……」

 モノよりも体験が良いと本人が言うなら、僕に異論はない。でも、他にも何か用意しようと心に決める。ご馳走と、ケーキと、お酒が苦手な君のためにちょっと良いお茶と、何か。どんなものがいいかな……

 よく晴れた日に公園の芝生広場に行った。レジャーシートもあったんだけど、君は芝生を直に感じたいという。昨日も晴れていた。濡れる心配はないだろう。

 実際に横になった君は、なんだか不服そうな顔をした。
「どうしたの?」
「芝の下に石でもあるのかゴツゴツしてる」
 それはいけない。
「……ちょっと移動しようか」

 石があたらない、なるべく平坦な場所を見つけて、再度挑戦。
「…………眩しい」
 仰向けで顔を顰めた君に、思わず僕はプッと吹き出した。
「そりゃそうだろうね。日向だし」
「……でも、暖かくていいねぇ……」

 本当にうとうとし始めた君を見つめる。きっと今の僕は愛おしいものを見る目をしているんだろう。髪を撫でようとして、やめた。起こしてしまうかもしれない。

 起きるまで、と言われたけど、寒くなる前には起こそうと決めていた。風邪を引かれるのは嫌だから。
 ぽかぽかと暖かくてほとんど無風、遠くで子供の声がするけど、静かでのんびりしていて、心地よい。

 いけない、僕まで眠ってしまったら見張りにならない。持参したコーヒーを口に含む。ホットのペットボトルは買った時よりいくらか冷めていた。自分で淹れた方が美味しい。

 規則正しい寝息を聞きながら、無防備な姿を晒してもらっている幸せを噛みしめる。この寝顔を写真に残したい。できることなら待ち受けに……でも、そんなことをしてバレたら物凄く怒られるだろうな。

 よく眠っている。まさか、睡眠不足でここに来たわけじゃないよな?
 少しだけ心配しながら、この顔を毎日見られたらいいのにと思った。今よりももっと距離を詰めたら、君は逃げるだろうか。同棲がきっかけで別れるカップルもいると言うし……

 横を向いた君は両方の手を顔の前できゅっと握っていた。可愛らしい仕草だけど、指が冷えているのかもしれない。
 そろそろ起こすか?
 ああ、でも。もう少しだけ……



11/25/2024, 1:50:07 PM