花束
おじさんまだ〜?
のんびりしてると陽が落ちるよ
海沿いの山道は行けども行けども石造りの質素な民家と果樹ばかりでお目当ての花は見えない
ラベンダーの島だって聞いたからわざわざここまで来たのに
イルミネーションなんて無さそうだし
日暮れたら車チャーターした意味ないよ
片側に広がるアドリア海に沈む夕陽もきれいなんだろうけど…そんな事思いながらも気が逸る
かなり登ってようやく丘らしい場所にさしかかった
さえぎるものがないため強烈な夕陽があたり一面をオレンジ色に染め抜いている
車内にも容赦なく射し込んで来て思わず目を細めてしまったその先に紫と茶色のグラデーションの一帯が見えた
ラベンダー?ここでいい!降ろして
程なくトラックが止まった
どうやらここがおじさんの畑らしかった
観光客用ではないのが一見してわかる
近づくとラベンダーの円い塊が痩せた畑を秩序なく埋め尽くして海風にあおられ強烈な香りを放っていた
ワイルドだな〜これもラベンダー?
富良野のイメージとは大違い
橙色のフィルターがかかった畑を大急ぎで駆け巡り夕陽と追いかけっこして記念写真
いつの間にか西陽は水平線に沈み残照に変わっていた
帰らなくっちゃ
トラックを探すとおじさんがラベンダー片手にこっちこっちと手招きしていた
助手席にとんと腰掛けた瞬間にどさっとした重みがのしかかった
おじさんが私の膝に無造作に置いたラベンダー
ピンとして膝からはみ出している刈りたての花は新鮮な力強い香りを放っていた
この島に根付いてきた野生のみずみずしさこれぞハーブって感じでパワーがみなぎっていた
一期一会の人からのワイルドな花束を縦に抱きしめておじさんに別れを告げた
満足感で一杯のありがとうと一緒に
2/10/2026, 6:55:35 AM