『空に向かって』
空に向かって伸ばした手はくうを掴み
そのまま地面に吸い寄せられるように体が落ちていく。
全部、全部これでよかったんだ。
目をぎゅっと瞑って身構える。
...宙にぶら下がっている感覚が続く。
恐る恐る目を開けると誰かが私の腕を握って
私が落ちるのを止めていた。
「何やってんの...!」
火事場の馬鹿力と言わんばかりの力で
か細い腕に引っ張られて屋上に戻る。
「ねえ、何やってんの!!」
声と容姿を確認して改めてクラスメイトと認識した。
普段何気ない会話をする程度。
ただそれだけの仲なのに助けに来たようだ。
「別に、あんたには関係ないでしょ。」
行き場を失ったイライラをぶつけないように
制服をはたいてその場を後にしようとする。
「関係あるよ!何かあったんなら教えてよ!」
ただ何気ない会話しかしないあなたには言うことないよ。
「私!力になるからさ!」
無視しようとした時その言葉に足がピタリと止まる。
もう、限界だ。
クラスメイトに近寄りお腹を見せる。
「家に帰れば親に殴られ姉に見捨てられた。
学校に居場所も無ければどこも安心なんてできない。
私がどれだけ勇気を出してこの場に居たか考えた?
あなたが力になれるのはそういうことを理解することだよ。」
そう言って今度こそ屋上を後にした。
次こそ、次こそは空に向かって手を伸ばせば届くと信じて
掴めなかった手を見ながら...
語り部シルヴァ
4/2/2025, 12:08:03 PM