彼について問われたらみんなこう言うだろう。
傍若無人なゴロツキだと。
「あんたまた街で騒動起こしたそうじゃないか」
朝早く屯所の自室で深酒で酔いの冷めやらぬ風情で横たわっている男に、この組織を取りまとめる男が詰め寄る。
「あぁん?そんな事した覚えねぇな」
大きな体躯でぞんざいに横たわりながら上目遣いでその男に視線をよこす。
「角の問屋を襲ったのはおめぇさんじゃないってことかい?」
静かに怒りの色を添えて上から見下ろす男は問い返した。
「しらねぇな。どっか他のやつがやったんじゃないのか」
とぼける男に業を煮やしたのか、その男はピシャリと盛大に音を立てて障子を閉め足高に去っていった。
「うるさい」
ポツリと言ってまた寝返りを打って寝直す。
後に知れるのだが、その問屋は物品を買い占め私腹を肥やしていた。
それが彼は気に入らなかったのだ。
またある日は屯所によく遊びにくる女の子が行方不明になった。
かくれんぼをしていたらしい。
周りのみんなが必死に探したが、次の日にはその子の訃報が伝えられ、その葬儀からその男はふらりと飲みに消えたらしくそこでも周りの反感を買った。
実はひっそりとひとりで涙を流してた事は誰にも知られていない。
またある時はこの男に付いていきたいと幼い剣士が願った時。
「邪魔だ。付いてくんな」
とそこにあった茶碗を投げられた。
子供相手にと非難を受けたが、その時この男はこの屯所内で自分がよくない方向に向かいつつある事を知っていたのだと思う。
度重なる目に余る暴挙、程なくして彼の粛正が決まった。
その男にはその男なりの正義があった。
誰にも理解されなくても譲れない正義があったのだ。
荒々しく振る舞うその裏で。
この国をよくしようと、その男なりのやり方で成し得ようと。
思う気持ちは誰よりもあったのだ。
誰にも知られる事もなく。
その強い信念は。
そして、
彼がどんな人だったかと聞かれたらみんな変わらずこう言うだろう。
彼は、傍若無人なゴロツキだったと。
⚔️💙(誰もがみんな)
2/11/2026, 9:56:24 AM