涙の理由
これまでの想い出も。
今日というこの日も。
この瞬間さえも。
何時までも忘れないよ。
俺はそう言って、
微笑んでみせた。
いつもみたいに、
『さよなら』の代わりに、
口吻を交わして。
またね、と言い掛けた時。
不意に溢れた君の涙を、
俺は、拭えかったんだ。
その涙の理由が。
俺には、分からなくて。
分かりたくなくて。
何時かはこんな日が来ると、
感じてはいたけれど。
時が過ぎてしまえば。
どんなに鮮やかな想いも。
どんなに大切な思い出も。
黄昏の空に溶ける様に、
やがて消えてしまうのだから。
君は、そう言いながら、
泣き顔のまま微笑んだ。
涙の理由。
聞かせてよ。
俺はその言葉を飲み込んだ。
涙の理由。
そう、それはきっと。
蜂蜜色と薄浅葱。
10/10/2024, 7:05:52 PM