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「消えた星図」

 「うーん。この星が、これだから…。あっ!あったっ!あれがアンドロメダ座だ!隣で光ってるのはカシオペア座かなぁ」

 風で揺れる葉の音とフクロウの声しか聞こえない静かな森に君の声が響く。両手で握りしめた星図と空を交互に見る君の横顔はまるで少年のように無邪気で純粋だった。
 今まで星なんて誰と見ても変わらないと思っていた私にとって君との出会いは衝撃的で新鮮なものだった。

 「ほらほら!そっちも星図あるでしょ?せっかく来たんだからいっぱい見つけようよ!ここにある星があの星でね…」 

 私が手にしていた星図を見ながら君が一つの星を指差した。この夜空の中でも一際強く輝く一番星が、私と君を照らしている。
 きっと、この時が一番幸せだったなと思う。
 あの日の星図はいつのまにかどこかへ行ってしまった。
 今日も夜空にはあの日と同じ一番星が輝いている。
 君もどこかで見ていたらいいな。
 

10/16/2025, 1:37:25 PM