窓を開けようとした時、一瞬だけ小さく白い光が見えた。
窓を開けた瞬間、私の左肩は紅く染まった。
ゆっくりと血飛沫が空中に舞い、遅れて強烈な痛みが走る。
私は、衝撃で後ろに倒れる最中であった。
噫々、此処が私の最期の場所か。
悪くない、むしろ良いくらいだ。
生家で死ねるなんて、夢にも思わなかった。
まだ、実感が湧かない。
幾度も死際を潜り抜けてきたから…だろうか。
いつもなら、逃げ切れると確信する。
しかし、今回は違う確信が頭を過ぎる。
『死』の文字が、何度も頭を過ぎる。
熱かった左肩は、徐々に冷たく、左腕の感覚は無に等しい。
ガチャ…、玄関のドアが開いた音が聞こえる。
トン…、トン…、トン…。倒れている私に、足音が近づいて来る。
カチャ…。ピストルのロックを外す音が、左から聞こえた。
「さらば、哀れな者よ。」男、否、青年の冷たい声が聞こえた。
まだ若いのに、その腕前か。
なんと、世界は不平等なのだろう。
バン…。ピストルを発砲した音を最期に、私の意識は事切れた。
7/1/2024, 2:19:09 PM