いおりん

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この道の先に


「それじゃ、また明日ね」
家の外から聞こえる若々しい声。
平和なこの世の中では、人々は、当たり前のように明日が来ると思っている。 そんな保証は無いのに。
 
ボクは朝を迎えるといつも、ここは死後の世界かどうかを確かめる。 詳しく言うと、外はいつもの風景か、身体は正常に動かせるかなどなど、何かに警戒しながらその日の朝を過ごす。ボクは一人暮らしなので、基本的に寂しいのだが、皮肉な事に「それ」のおかげでそんな気持ちは吹き飛んでしまう。
 
昼、「それ」は朝にしか活動しないので昼からは安らかに過ごすことができる。
ただ、夜には「やつ」が活発になる時間帯なので、また警戒しなければならない。
 
「やつ」はきっとボクのような人間を狙っていて、
ターゲットに隙ができたところをプスりするのだろう。
だって人間というのは醜い生き物で、自分勝手でわがままで、思い通りにいかないと、何をするかわからない。
だから、ボクを狙うんだ。嫉妬するんだ。妬むんだ。
「殺せばいいんだ」

今日も彼は、どこで生成されたのか分からない殺意を
どこにいるのかのかも分からない誰かに向けるのだった。

7/4/2023, 9:53:46 AM