作家志望の高校生

Open App

まだ俺が随分小さくて、何かを考える能が無かった頃。
馬鹿で愚かだった俺を隠れ家にするように、何匹か動物が寄ってきた。
そいつに餌をやるがてら地面に転がっていると、少しずつ、本当にゴミに取り込まれていっている。
ほんの数ミリずつ自分の体を飲み込む蔦は、恐ろしくも美しく、綺麗だ。
そんなある日のこと。
俺は突然家から連れ出され、久々に車に乗せられた。
長いこと寝るしか無かった時間が、流れる景色と一緒に移り変わっていく。
どこへ連れて行かれるのかと思えば、到着したのはどこか分からない広い市場だった。
こっちだと手を引かれ、大人しくついていく。
外はもう夜になったらしく、煌々と光る月と星々が地上を薄っすら照らしていた。
幼い弟は馬鹿なもので、母が俺の手を見知らぬ男に引き渡して帰ろうとするのを泣いて引き止めた。
初めは出来のいい弟だけを連れ帰るつもりだったのだろう母の手に、少しずつ苛立ちが募っていく。
月明かりが陰った僅かな隙をついて、僕たちは市場を飛び出した。
大人の目では到底見えない狭い隙間に入り込んで、2人して口元をぎゅっと押さえて息を殺す。
しばらくは男達の野太い怒声と母の甲高い絶叫が響いていたが、やがてはそれを離れていく。
かつかつと苛立った様子のヒールの音が離れていって、ようやく俺と弟は詰めていた息を吐いた。
そんな光景を、チカチカと喧しく瞬く星空だけが見下ろしている。
指先を飲み込もうと絡みついていた蔦も、生きたまま死んだような俺の体を隠れ家にしていた小動物も、もう見当たらない。
冷たく、寒く、ふたりぼっちの星空の下。
あまりに唐突で、あまりにだだっ広い初めての自由を与えられたって、俺は怯えるしかできなくて、隣にいた弟の方が余程、自由に慣れていた。

テーマ:星空の下で

4/6/2026, 9:10:37 AM