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 朝、いつもと同じ時間に目が覚めた。目覚ましは掛けてないのに身体に染み付いているのだろうか、2人が寝てる布団を後にしてキッチンに向かう。スリッパがフローリングに擦れる音しか響かない廊下は昼間の騒がしさを忘れさせる程にモノ寂しさを帯びている。キッチンに立ち朝ごはんの支度をする。
少し前までは一人暮らしだったから適当なゼリー飲料で済ませていたが流石に人にゼリー飲料を進めるのはどうかと思い料理を作ることにした。幸い2人は俺の作る料理を気に入ってくれたらしく、それから沢山リクエストをしてくるようになった。無理難題を言われる事もあるけど、幸せそうに頬張る2人を見てると不思議と要望を叶えたくなる。まだ一緒に少しの時間しか過ごしていないのに自身の日常に組み込まれつつある事に我ながら驚く。
 そう思考回路を回していると朝ごはんが出来上がり始め、アルベルトが起きてくる。髪はまだ結っておらず無造作に飛び跳ねた白髪を引き摺りながら眠そうに起きてきた。

「起きたか。おはよう」

そう声をかけても頷くだけで返事がない、まだ夢の中なのだろう。寝ぼけているアルベルトを椅子に座らせホットミルクを渡すと少しづつ飲み始める。寝起きの年老いた猫を見ている既視感で自身の広角が上がる、笑ってると思われると怒られるので急いで戻すが気付かれていない。安堵のため息を吐いているとしっかり目が覚めたのかアルベルトが腹が減ったと嘆き始めた。イオを起こすのを頼んで朝食をテーブルに並べる。自身の母も、こんな日常に幸せを抱いていたのだろうか。



創作 【日常】

6/22/2024, 2:01:32 PM