粉末

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俺にとって君は特別な存在だけれども
君にとっての俺はどうなのだろう。
君の手にある古いけれど大切にされてきた本を見てそんなことを考えてしまった。
「この本は特別。昔からの友だちみたいなものだ。」
へえ、そっか。なんてつまらない嫉妬を出してしまう。本に嫉妬なんて。いよいよだな。
「その子は特別?ずっと一緒にいるんだろ?」
その子、と呼ばれた俺の膝にいる犬のぬいぐるみ。
とぼけた顔でくったりと寝そべった姿が気に入ってるし触り心地もいい。
お腹いっぱいになって昼寝をしたときも
悲しくて泣きながら眠った夜も
あと5分あと5分を繰り返した朝もずっと一緒だった。
「うん、特別だ。だから君も抱っこして撫でてあげて。あ、ちゃんと洗ってるから!」
「ふふ。ありがとう。じゃあこの本を読んでみるか?
そんなに長くないし、わかりやすい。」
活字は苦手だけれど頑張ってみるか。
お前を知れば彼女の特別になれるかもしれないからな。
ぺらりとページをめくってすぐに頭がくらりとした。
なれる、だろうか。

「その本は誰にも触らせたことがない。特別だ。」



特別な存在

3/24/2024, 12:49:31 AM