※🟪🎴
「お前は幸せになれよ、」
あの日、王は言った。一下僕に、幸せになれと。俺は掴めなかった幸せを、お前らは掴むんだと、そう言った。まるで私たちの幸せの中に貴方がいないのが当たり前のような。そんな苦くて苦しい経験をこれから先にして、それでもなお幸せになれると思うのか。思っているのか、貴方は。
ふつふつとした怒りが湧く泡沫。視界がぐらぐらと揺らめいて、声が遠くなって。意識がどこかに引っ張られるような、そんないつもの感覚がやってきてフェードアウト。
きっと目が覚めても、私はまた覚えていられないのだろう。
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「──る、こはる、來春!」
パチリ。聞き慣れた声がして意識が浮上する。うぅん、まだ眠い…寝かせてほしいな。
「だめ。俺が言うんだから起きろ」
横暴な王様だなぁ。でもまぁ、仕方ないかと一人胸の内で納得した。我らが王──黒川イザナがそう仰るのであれば、下僕は従いましょう。
むくりと体を起こし、寝ぼけ眼を擦り始めた私を見て大丈夫だと思ったのかイザナくんは部屋を出ていってしまった。あぁ、せっかくのイケメンが……ご尊顔……。と残念がるもそうは言ってられないと頭を切り替える。イザナくんが出ていったのはきっと朝ごはんを作るためで。その御膳で私はすっぴん&パジャマを晒すのか。否、それではいけない。イザナくんが良くても私が良くない。
布団をばさりと脱ぎ落とし、着替えと化粧の準備に取り掛かった。さぁ、ここからRTAである。もちろん競う相手は過去の自分。そして──王・イザナくんである。
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「ぬわぁぁ!また負けたぁ……」
お前まだそれ続けてんのか。プレートを手に呆れ顔のイザナくん。何それ首の傾げ具合最高すぎない?かわいい、心のシャッター何枚撮らせれば気が済む?はっきり言ってもう容量オーバーなんだが。
「アホなこと考えてねーで、早く座れ」
朝飯、要らねーのか?アッ、かわっ…!!…ちょ、嘘です嘘です!要りますとも、えぇ要りますとも!!あなたの作ったご飯を食べない?誰だそんな罰当たりなことしてるやつ!!!!
、途中です。ここから先シリアス展開の予定。
『最後の声は聞きたくない』
6/26/2025, 2:40:07 PM