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まだ11月だというのに、街は既にクリスマスというイベントに浮かれ気味である。
私が勤務するショッピングモールの店内は、電飾の眩しいツリーと彩やかな福袋の見本が交互に置かれ、よくよく考えると何とも不思議な光景である。
ジングルベルのメロディは、耳にタコができるほど聴かされた。

「自分には関係の無いイベントだよね」
そう言い聞かせて、早数年が経っている。
今年も24日は、安定の出勤日だ。
いつしか自分は、“イベント日の空き要因“としてシフトに入れられるようになった。


「元々、人が多いのも騒がしいのも性に合わないしさ」
いつからだろう。
皆が心躍らせるものに、素直に足並みを揃えて楽しめなくなったのは。
私って、こんなに趣の無い人間だったっけ。
レジをすり抜けた品物たちが、赤や緑の包み紙で着飾られては心の荒んだ私の手を伝い、客の手に渡っていく。

21時50分。疎らに残る賑わいを壊すように流れる蛍の光に、私は落ち着きを取り戻しつつある。
明日は休日。あと10分で、私は今年のクリスマスから逃れられるのである。
22時。はあ終わった。
人気の無くなった店内で、聴衆の居なくなったジングルベルが寂しく細く響いている。
帰りにコンビニでスイーツでも買おうかな。
「クリスマスイブだってのに、みっちり夜まで8時間働いてんだから」
必死になって世の流れにしがみつく自分の、何と哀れなことだろう。今日はダイエットは中止である。


色恋じゃなくてもいい。
別にクリスマスじゃなくたっていい。
彼氏が欲しくても出来ない、寂しい人でもない。
ただ私は、24日という日付にかこつけて買った、
このコンビニのケーキの美味しさを、
甘いね、と言ってただ分かち合う誰かを、
何年も何年も探しているのである。
家族もパートナーもいないこの自分の中で、消化しきれない「クリスマス」という響きが、居心地悪く残っていくだけなのだ。

クリスマスイブの喧騒の裏で、歯車のごとく動き回った1人の人間が、すっかり冷えきった帰宅の路を歩いていく。

12/24/2023, 7:56:47 PM