トポテ

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"どこにも書けないこと"は、 どこにも書きたくないことでもあり、言えないことでもあり、言いたくないことでもある。
僕にとっては、はやく忘れたいことでもある。
でも、今日はここに書いてみようと思った。
紙に書いて記録すると『記録する=忘れてもいい許可』が、頭の中で起こって忘れられると聞いたから
二度と消せないように、ボールペンを右手に持ち、紙の上にペン先を置く。
言葉を選んでいるうちに紙に黒いインクのシミが少しずつ広がっている。それに急かされるように文頭を書き始めた。
『僕は彼を好きになってしまった。
ちゃんと認めたのはXXXX年X月XX日
この日より前にうーっすら、もしかしたら。と思ってはいたけどその頃は知らないふりしてた。
認めざるを得なくなったきっかけ⤵︎ ︎
始まりは僕が働いてるカフェに彼が来たこと。
店に入るなり、彼は僕の顔を見つけてはしっかり目を合わせてにこっと笑い、僕の前のカウンター席に座った。
「あんたのおすすめを淹れてくれ」そう言われて、棚から茶葉を選んでる間、後ろにいる彼に耳が赤くなっていることをバレませんように。と無意識に願ってしまったこと。
今思い出しただけでもやるせない気持ちになる。
彼の名前は』
ぷるるる、ぷるるるる
スマホがなっている。画面を見ると、丸いアイコンの下に彼の名前があった。ひと呼吸おいて緑色の電話マークをスライドし、スマホを耳に当てる。
「もしもし」
声を聴いただけでも心臓がどきどきする。ほんとに書いただけで忘れられるのだろうか。
「どうした?声が暗いぞ」
「え、あ、大丈夫」
「そうか。ならいいんだ」

はぁー。効果には期待しない方が良さそうだ。

── どこにも書けないこと

2/7/2024, 11:10:09 AM