星琳

Open App

 昔からよく見る夢がある。知らない街で、知らない人に手を引かれて、綺麗なお屋敷に行く夢。とても綺麗な家で、行ったことなんてもちろん無いのに何故か懐かしくて泣いてしまう夢。時代はその屋敷で、聞いてみたら明治だと言う。教えてくれたのはその屋敷のご主人で、私はどうやらそこの養子となるらしい。それから少し楽しく明るい場面が続くのだが、少しすると一気に変わる。

 場面が変わった。綺麗なお屋敷はあちこち血で汚れている。そして、そこら中に使用人が死んでいる。その後ご主人が殺され、奥様が殺され、義姉が殺され、最後に私が殺される。皆私を庇って死ぬ。

 目が覚める。目元と枕が涙で濡れている。いつもそう。何度同じ夢を見ても何度同じ言葉を交わしても、何度守ろうとしても、逃げようとしても、逃がそうとしても、事件を防ごうと街に出て人脈を作っても、失敗失敗失敗。でも、今日は少し違った。犯人を見た。覚えていなくちゃ。次こそみんなを守るために。でも、恐らく次は無い。警邏隊が来て犯人を捕まえてた。死ぬ直前に見たんだ。これで終わり。寂しいな。そう思ったら、どこからか声が聞こえた。お屋敷の人たちの声。「ありがとう。」とか「気にしないで。」とか「元気でね」とか色々。ここは現代令和の日本。あの人たちはここには居ない。それでもきっと私の心に居続けてくれる。きっと私を見守ってくれる。そんな気がした。

3/21/2023, 7:03:58 AM