【遠い日の記憶】
クローバーでいっぱいの細道を抜けると沢山の立派な紅葉の木に、柿色の葉が満開に広がる校庭。
気づけば心地よく風を切って走っていた。
肌に触れる風は涼しげでありながら、心の中はとても温かだった。
脚が前へ前へと先陣を切る。
不意にハッとして、人目を気にした。
でもあたりには誰もいない誰も見ていない。そう思った。いや、そう思うことにした。と言った方がいいのだろうか。
とても軽く、早く、走れる。
自分の体じゃ無いみたいだ。
体が動く動く。とても、とても。
息も乱れず、楽しく走る。
自然と顔に満開の笑顔が出来上がる。
咲き誇る暖色の紅葉が目に優しく、なんだか私を歓迎してくれているようで、居心地が良い。
走る先には、太陽がいた。紅葉の木から日差しがちらちら覗いている、木漏れ日だ。
真っ直ぐ行けば花壇にぶつかる。でも止まりたくない。—止まるわけないっしょ!!
心地よく走り続け、花壇をひょいっと一っ飛びで飛び越え、日に包み込まれた—
目が覚めた。
珍しく何年振りかにいい夢を見た。
悪夢をみない日なんて、ごく稀で。
いい夢なんて奇跡に値するもので。
リアルな感覚だった。気持ちが良かった。人生で一番心地良い瞬間だったと言えるだろう。
7/18/2024, 3:06:57 AM