光と闇の狭間で
水の中、必死でその手を掴む。冷え切った手に恐怖を感じる。焦れば焦るほど自分の足は空回りし、流されていく。なんとか岸に着いて、急いで救急車を呼んだ。
夜の川は何事もなかったかのように流れる。
こんな日に限って星が綺麗だ、場違いにも何故かそう思った。アイツの顔に近づく。なんとか呼吸はしている。
バカやろう、声には出さずに呟いた。
目を開く。眩しい夕日がアイツの顔に影を落とす。
いつも通り変わらない安らかで、どこか強張ったような顔。
もう一ヶ月経ってしまった。アイツはずっと眠り続けたまま。なぜ自殺なんてしたのだろうか。同じ高校ではないが唯一の親友だった。たった一人の心を許せる奴だった。なのにどうして、、、。
夕日が沈み、星が輝き始める。今日は新月らしい。
病院を出て歩く。アイツの顔を見て覚悟を決めた。
必ず潰す、アイツをこんな目に合わせた奴を。
夜、街灯が街を明るくする。こんな気分の日には少し幻惑に見えてしまう。気のせいだろうか。
路地裏を歩きながら考える。アイツを自殺に追い込んだ奴がやっとわかった。あと必要なのは少しの勇気だけだ。大丈夫、自分ならやれる。待ってろよ、お前が生きれる世界にしてやる、自分に言い聞かせる。計画を見直すために、ポケットからスマホを取り出してふと気づく。なんだこんな震えてるじゃないか。
本当は怖い。どれだけ強がっても自分は自分。そう簡単に変われるもんじゃない。でもそれではダメだ。
アイツのために変わらなければならない、自分が最も嫌悪するモノに。クソな鬼畜どもに。そうでなければ勝てない。アイツが生きやすい世界に出来ない。アイツを救えなかった自分を赦すことが出来ない。
路地裏を出る。気づけば雪が降っていた。光り輝く街を見て思う。なんだか魔界への入り口のようだ。
12/3/2023, 10:12:22 AM