萌葱

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夢をみている。
君が私の頭を撫でてくれている夢。君はまるで宝物に触れるかのように優しく髪をすく。

夢だということはすぐに分かった。君がまるで恋人にするように優しく触れてくれるなんてありえないから。

…いや、今の関係でも十分満足している。馬鹿なことを言って笑ってバシッと叩いたり叩かれたり。
それで充分、なのだけれど。

こんな風に優しく頭を撫でられるなんて、困ってしまう。この夢がいつまでも続いて欲しいと願ってしまう。

そのうち君は私の頭を撫でる手を止め、目を細め.柔らかく笑って
「好き」
と囁く。

なんて、甘ったるい夢なんだろう。
はやく、はやく夢から覚めてしまおう。これ以上、こんな夢が続くなら、現実に戻されたとき、きっとしばらくは引きずってしまう。

私は思い切り頬をつねった。

…気づいたら教室にいた。
そうか、机に突っ伏して寝てしまっていたのか。

私が伸びをするとぱさりと肩から何かが落ちた。
…男子の、ブレザー?…誰の?

不思議に思いながらブレザーの内側を確認すると、そこには君の、苗字が刺繍されていた。

それを見た瞬間に、あの優しく触れる大きな手だとか、「好き」と囁くちょっとだけ甘かった声だとかを思い出した。やけに、リアルな。

…まさか、まさかね。
…でも、でももしかしたら。
夢見たっていいのだろうか。すこしだけ期待してもいいのだろうか。
 


1/14/2023, 6:47:40 AM