夕木

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【題:どこにも書けないこと】

 白紙の日記を前にして、右手にペンを握る。
 SNSアプリを起動して、フォロワー数0の私のアカウントに投稿しようとする。

 だめだ、書けない。

 わたしだけの日記になら、なんでも書けると思っていた。
 誰にも見られないXの鍵垢でなら、なんでも呟けると思っていた。

 嬉しかったことも、腹が立ったことも、恥ずかしかったことも。
 私しか見ないのだから、正直でいられるはずだった。

 でも、これだけは書けない。

 なんだか、書いた瞬間に形がひとつに決まってしまいそうだから。

 その正体は、私は今苦しいんだとか、幸せなんだとかの、妄想か本当か分からなくって、揺れ動き続けている感情。

 本当は楽しいこともあるのに苦しいって決めつけたり、嫌なこともあるのに幸せだって自分に催眠をかけてしまうのが、きっととっても怖いんだと思う。

 だから、これはどこにも書けない。
 書くべきじゃない。

 人なんて皆あやふやだ。
 迷い続けないといけないんだ。


 ……ああ、この文章も、本当は書いてはいけないのかもね。

2/7/2026, 12:00:07 PM