Sweet Rain

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 蹲る貴方を見て、そっとその柔らかな耳を塞いだ。

 丸みを帯びた、童心特有の純なる魂に
 この戦場は似つかわしくない。

 
「──やめなさい、無闇に死体に触るんじゃない」
「だってカタチの残ってる人なんて‪、✕‬年ぶり──」

 父は口答えした私をひと睨みして、そっぽを向いた。
 勝手にしなさいという脅しに近い無言の諦めが
 かえって今は有難かった。


 地球探索。
 かつて銀河で栄華を誇ったその惑星は、
 汚染し、争い、自爆して、荒廃した。

 なんとも惨めで無様な最期だと、みなが嗤った。
──父を除いて。

「すぐに支度しなさい。二度は誘わない」

 行き先も告げず、ある日突然父は私にそう言った。
 まさか、と他所の闇を垣間見たいという邪な好奇心が、恥ずべくも私の背を強く押した。


「La、La、La……」
「──やめなさい、不謹慎だ」
「だって、この子が歌ってるのよ」

 何を言っているんだと表情を固くした父に
 私は地面を指差して、視線を促す。

『せかいへいわのうた』

 土が被さって開きっぱなしの薄い冊子に印字された
 しなやかな文字の整列。

 私には読めないけれど、きっと希望に満ちた言葉だ。

「──さよなら。また、いつか、ね」


   【LaLaLa GoodBye】2025/10/13

10/13/2025, 3:12:23 PM