かたいなか

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前回投稿分の同時間帯、最近最近の都内某所、某不思議な私立図書館から始まるおはなし。
お題回収役の名を藤森といい、風吹き花咲く雪国の出身。昨今の希少植物の減少を寂しがっていた。
このおはなしはフィクションかつファンタジーで、
ゆえに、姿を消し続ける花々の保全手段を、
藤森はまさかの、異世界の技術に見出した。

というのも先日藤森の前に異世界人が現れて、
その異世界人の世界には希少な花を増やす方法も、
この世界の環境問題を一気に解決する技術も、
全部ぜんぶ、既に存在しておるそうで。
ただその「別の世界の技術」を勝手に導入すると「管理局」という組織に法律違反で捕まるらしい。

本来ならば未だ異世界渡航技術など存在せぬ東京。
異世界転生も異世界渡航も、すべてはゲームや漫画の中にのみ存在するエンターテイメントで、
異星人は居ても、異次元人は存在しても、
世界の壁を越えて、別の世界からこの世界に、必要以上に干渉することは、違法なのだという。

藤森が出会った異世界人は、その法を破って東京に現れて、そして、藤森と出会ったのだ。

で、ここからが本題にして、お題回収。
藤森が今日も職場の私立図書館から、少し気温の下がる夜の頃に帰宅して、
そして、防音防振の整った自宅アパートに到着、
鍵を開けて部屋に入ると、

「やぁ、藤森、ひさしぶり!」
カリカリカリ、かりかりかり!
藤森の朝食たるナッツ入りグラノーラの袋を勝手に明けて、ハムスターがカボチャの種を失敬。
「相変わらず酷い顔してるね。
空はこんなにも澄み渡ってキレイなのに、随分とまぁ、曇りに曇った顔しちゃってさ」
ハムスターは藤森の顔を見て、日本語を話した。

ハムスターは「管理局」なる組織の局員。
ビジネスネームを(ハムスターのくせに)、「カナリア」というのだという。
藤森が異世界人と接触してしまったので、
その異世界人から危害や被害を加えられないよう、
あるいは藤森自身が、異世界人にそそのかされて法に違反しないように、監視しているという。

断じて藤森が食っているミックスナッツグラノーラを気に入って入り浸っているワケではない。
多分。 たぶん。

「お久しぶりですカナリアさん。……空?」
「だって、空だよ。夜空だって、空だろ?
空はこんなにも、過剰な光さえ無けりゃたくさん星が見えてただろうコンディションなのに、
君ときたら、どうだい。ひとりで悩んじゃって」
「放っておいてくれ。あなたには関係ない」
「そう言うなよ。僕だって仕事なんだ。

ところで今日はそんな僕からお土産がね。
ほら!最近100均で見つけてきたヒマワリのt

待って待ってまって保健所に連絡しないで!
冗談だよ!僕だって君の主食がヒマワリやカボチャじゃないことなんて知ってるよ!待って!
チュー!ちゅー! ぎーぎー!」

こんばんは。動物愛護センターですか。
ポケットからスマホを取り出し、ポンポン、ぽんぽん、タップしてスワイプして耳に当てた藤森を、
ミックスナッツの海でカボチャの種だのココナッツの皮だの、アーモンドだのを堪能していたハムスターが必死に引き止めている。
「ちゃんと、君に利益のあるお土産だってば!
ねぇ藤森ー!君と僕の仲だろ!藤森ー!」

わーわー、ぎゃんぎゃん。
藤森の右足から腰、背中から肩へ。
とっとこ伝って駆け登って、日本語話すハムスターが必死に懇願している。

「ね、一旦、一旦!スマホしまって、僕のハナシ聞いて、ね!聞きたいだろセカンドオピニオン」
「どこから逃げたか知らないハムスターを保護しまして、……あぁ、すいません、息子が『自分で世話する』と言っているだけです」
「僕が君の息子はちょっと無理があるでしょって!

こら!藤森!噛むぞ!花粉ばらまくぞ!
君のこと、スギ花粉症患者にしちゃうぞッ」
「はい、では、そちらを確認してから。
それで見つからなければ、また。 失礼します。

 ……で?私に有益な、何だって?」

ひどいや、ひどいや。カナリアは少々不機嫌気味。
ちょっと冗談したからって、ちょっと君のグラノーラを食い散らかしたからって、
僕のこと、簡単に保健所に通報したりしてさ。
ぽつぽつ、ごにょごにょ。
独り言を言っては、どこからともなく、首かけ式のカードホルダーを取り出して、藤森にかけた。

「これは?」
藤森が聞いた。
「僕たちが『異世界の技術を導入するのは危険』って、『言う』より直接見せた方が早いだろ」
カナリアはまだ、通報にスネているようであった。

「異世界渡航技術の確立してない世界に、異世界の先進技術を勝手に導入するのは違法なんだ」
カナリアは言った。
「なんで違法なのか、紹介する申請が通ったから、
藤森、君のこと、管理局に招待してあげるよ」

その後のことは、「空」のお題の外なので、今回は詳しくは描写しない。
次回のお題次第では、すべては夢オチ。
あるいは次のお題次第では、藤森は不思議なハムスターに連れられて、以下略、以下略……。

6/25/2025, 5:26:55 AM