雨は、冷たく、衣服を濡らし肌にピタリと張り付かせ、乾くまで離させない。
勢いが強くなれば、雹でもないのに小石混じりの砂利を投げつけられているかの様に痛い。
とても鬱陶しいものだ。
傘で防げど、次は足元に纏わり付き歩く事を妨害する。
恵みの雨と言われるが所詮植物にとってのこと。
そう思っていた。
初めて柔らかい雨に打たれたあの時までは。
バタバタと傘が跳ね返す雨の音を聞きながらまだまだ遠い目的地まで歩いている途中、ふと傘伝いに聞こえた音が止んだ。
目の前の地面は確かにまだ雨を受けて沢山の波紋を作っている。
雨が止んだわけではなかった。
だが、日が差し雨が冷やした空気が仄かに温められ優しく冷えた身体を包み始めていた。
とても奇妙な感覚。
お天気雨、狐の嫁入り、通り雨、境雨。
どれでもない。
とても優しく、静かに、まさに恵みの雨という言葉が合う雨を始めて享受していた。
私は人間なので傘越しではあるが、確かに心が少し豊かになった柔らかな雨だった。
11/6/2023, 11:27:40 AM