【星空の下で】
夏の夜はいい。
人が生きるには過酷な昼間と違い、適度な涼しさが心地良い。
夜の景色も好きだ。
高い山の上から見るような、派手な夜景でなくとも、スポットライトのような小さな街路灯のある風景が好きだ。
そう、この公園のように。
「〇〇…?」
お気に入りのベンチには、彼女が座っている。
ダル絡みする普段の彼女とは打って変わって、ぼうっと、星空を見つめていた。
虚空を見つめるような、あるいは、見えないものを探している瞳で、星空を見上げていた。
街路灯に照らされた彼女は、どこか現実から浮いて見えた。
ふと、彼女がこちらを振り向く。
振り向いた彼女の瞳は、空洞のように、生気を感じられなかった。
「あ、☓☓〜。いたんだ?」
次の瞬間、その空洞はふっと消え、見慣れた笑顔が貼り付いた。
「う、うん。こんな時間に会うなんて、奇遇だね?この公園、よく来るの?」
見てはいけないものを見てしまったような、ぎこちない笑顔で私は応える。
「ううん。ただの気まぐれ。やだな〜、幽霊でも見たみたいじゃん」
誤魔化している様子はない。いつもの〇〇だ。
「ベテルギウスってもうなくなっちゃったんだって」
「え…?」
ベテルギウスがもうない星、という話は有名だけど。
__オリオン座は、冬の星座だ。
「それじゃ、また明日ね」
戸惑う私を置いて、彼女は夜闇に消えていく。
いつもは向こうからやってくる背中が、やけに遠く見えた。
4/5/2026, 2:16:20 PM