頭にはライトを付けた帽子。寒さを凌ぐ厚手の防寒具を身につけて、背中には荷物がタップリ入っている愛用のリュック。たった1人の終わらない旅。
ここは名も無き廃墟。瓦礫まみれ、隅では見たこと無いような虫が走っている。天井の隙間から僅かな月明かりが差し込んでキラキラと埃を反射させている。きっと僕が歩いたせいで静かだった埃が舞い上がったのだろう。
旅に目的はない。きっといつかなにかあるだろう、位の軽い気持ちで始めたからいつ終わるかは自分でも分からない。
床に気をつけながら歩く。廃墟は床が脆くちょっとした衝撃で崩れてしまう。「ぐうぅ…」大した成果もないのに一丁前に腹は減る。とりあえず廃墟の中じゃカビ臭くて飯が不味くなってしまうから、一旦外に出よう。
この旅を始めて随分経つが、肉にありつける回数はごく僅かだ。大方住んでるのが魚と虫。あとは身を削って覚えた食べられる野草。ごく稀にウサギに似た生き物を獲って食べる。残念ながら今晩のご飯は昼間に釣り上げた魚だ。白身なのか、淡白だが臭みもなく食べやすい。
魚を調理(焼いただけだが)し、野草をサラダに見立て夕食の完成だ。見た目は質素だが味は保証する。…多分。熱いうちに食べ終えて一息。
この旅の最終目的はない。今やめてしまってもいい。こんな静かなカビ臭い世界じゃなくて、都会の喧騒にまみれた華やかな世界に行っても構わない。それでも分からない「何か」を夢見て僕は進む。
「旅路の果てに」
1/31/2023, 11:49:21 AM