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1つだけ

 心優しい天使Aはしばしば地上に舞い降りて、だれかの願いごとを1つだけ叶えてあげていました。

 あるとき、不幸な青年が言いました。
 どうか、この世界を終わらせてほしい、と。
 天使Aは彼に銃口を向けて引き金を引きました。天使Aは青年のことが好きだったので、悲しくなりました。

 あるとき、疲れた地球が言いました。
 そろそろこんな世界は終わらせてくれ、と。
 天使Aは大きめの小惑星を手配して地球にぶつけました。天使Aは地球のことが好きだったので、悲しくなりました。

 あるとき、鬱病の天使Aは別の天使Bに言いました。
 もう、この世界を終わらせてほしいんだ、と。
 天使Bは天使Aをタイムマシンに押し込んで、10^N年先の未来に送りました。きっと、その頃には天使たちもこの宇宙と一緒に滅びていることでしょう。
 それから、天使Bはイッツ・ア・スモールワールドを口ずさみながら天空を周回していましたが、しばらくすると涙があふれて声が詰まって歌えなくなってしまいました。それは天使Aが好きだった歌でした。

4/3/2024, 1:50:05 PM