灰燼

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あとどれぐらい、僕のままでいられるんだろう。

日が経つにつれ、僕の知らない記憶が増えていく。
出席した覚えのない授業、友達との覚えのない約束。
そうやってどんどん知らない記憶が増えていった。
最初は病院に行った。でも原因はわからなかった。
どんな病気なのか、対処法はないのか、と調べるうちに、
状況は悪い方へと進んでいった。
使った覚えのない大金、友達の非難の目。
最も頭に焼き付いている真っ赤な視界。
僕が、知らない僕になっていく。

落ちていく。意識が、落ちていく。
精一杯藻掻くけれど、僕はどんどん落ちていく。
もう一人の僕が笑みを浮かべながら僕を見下ろす。
暗くなっていく意識の中で、やけにはっきりと、
あいつの声だけが響いた。

「次はどれだけはやく上がって来られるんだろうなぁ?」

6/18/2024, 12:04:39 PM