紫炉

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『20歳』

成人式なんて別に興味なかった。なんて、いかにも「気合い入れて来ました」っていう格好をした俺が言っても誰も信じてくれないだろう。興味が無いのは本当だし、行かなくていいのなら来たくもなかった。俺がわざわざ気合を入れて来た目的は‘’あいつ”に会うことだから。なんでも、1度も日に焼けたことがないような肌にサラサラな黒髪。極めつけに、今にも消えそうな儚げな印象を持たせる二つの目をしたやつらしい。つまり俺と真逆なやつだ。

式も終わり、いよいよ待ち合わせの時間が迫ってくる。俺にしては珍しく緊張しているし、何なら手汗が酷い。

ーーー…?

待ち合わせの時間ちょうどに革靴をカツカツと鳴らし、俺の名前を呼びながらあいつは来た。母さんの言った通り、サラサラの黒髪に儚い印象をしている。1つ違う所があるとするなら真っ白を通り越して真っ青な顔色をしている事だろう。

ーーー……?

なんて考えていると、あいつは不安そうな顔で俺の方を見てきた。

ああ、それは俺の名前で合ってる。じゃあ、あんたが…。

「やっと会えたな。」

そう言って俺は、生まれて初めて会う双子の弟の手を取った。

1/10/2024, 4:22:18 PM