「親愛なる君へ」
親友が寮を出て行った朝、彼女は伝えそびれた言葉を手紙に記した。
「一番大切な人としてずっと傍にいてくれてありがとう。新しい世界でも頑張ってね。」
忘れ得ぬ数々の記憶を一つ一つ思い返しながら、丁寧に言葉を綴っていく。ペンは表面を擦り、やがて皮膚の下の骨を探り当て、暗い骨の髄までたどり着く。
「いつかまた出会うとき、君はどんな人と巡り合ってるのかな―」
そう書きかけた文を、慌てて線で掻き消した。
手紙を折り、封筒に押し込んで封をした。これはこの後の用事のついでに出しに行こう。
届かぬ想いを何重にも包んで、光の見えない内臓の底へ落し込んだ。
4/15/2023, 5:39:14 PM