目が覚めるまでに。
大学生になって入った
アルコール研究会といサークルは、
表向きには、民俗学から医療までを研究する
真面目な集まりという事になっている。
だが、大方の予想通り
飲み会がメインのチャラいサークルでしかない。
僕がこのサークルに入ったのは、
実家の酒屋を継ぐのに何か役に立つのでは?
と思ったからだが、案外楽しくやっていた。
その日は、一人暮らしをしている僕の家で
飲み会を開いて浴びるように飲んでいた。
先輩が持ってきた、やたらと度数が高い酒を
色んなもので割って飲んでは、
女の子が持ってきたツマミをあてにしていた。
ふと、目が覚める
時間の感覚も無いが、恐らく眠ってしまっていた
今が何時か確かめようとスマホを探そうとした時
自分が何かを握っていることに気付いた。
血糊がたっぷり付いた、酒の瓶
先輩が持ってきたやつだった
思わず、ひっ!と声が出たが
状況の把握をしなければと思い
周りを見回すと
頭から血を流した先輩と
ツマミを持ってきていた女の子が
横になっていた。
先輩!
安否を確認しようと
手を伸ばすが、直ぐにその必要が無いことを
悟ってしまった。
瞳孔の開いた、乾いた目
ピクリともせず、血塗れの頭から
僅かに白い物が見えていた。
込み上げる吐き気を堪え
今度は女の子に目をやると
こちら静かに寝息をたてていた。
起こそうと思った時に、ふと
ある考えが過った。
今のうちに、先輩を処理しておけば
帰ったことに出来るのではないか?
冷静に考えれば、其の場凌ぎの
浅はかな思いつきだが、とにかく
現実から逃げ出したかった。
もしかしたら、轢き逃げ犯も
同じ様な心理状態になるのかもなと
関係の無い事を思いながらも
自然とプランを練った。
先日、女の子から借りた漫画に
死体処理の方法が描いてあったのを思い出し
それをなぞる様に作業を進めようと考えた。
浴槽に先輩をなんとか運び、アルコールで
血を拭って、先輩の私物を隠して‥
最後に服を着替えたら、取り敢えずは
一段落する
大丈夫だ、頭は痛いが冴えている。
女の子もよく寝ているみたいで
寝返りすらうたない。
時間との勝負。
目が覚めるまでに。
8/3/2024, 12:46:40 PM