viola

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『もっと知りたい』

おしえて、きみのことを。
教えてわたしにあなたのことを。
教えてくださいあなたのまちを。
教えてほしい大事に受け継いだでんとうを。
教えて欲しいなその文化を。
教えてほしいよ価値観や愛の標を。
教えて下さいその地の歩みを。
教えて貰いたいなアナタの気持ちを。


そうすれば、もっとあなたを愛せるから。
一緒に未来を考えよう。きっと良い夢叶う夢。



駄文長文弔文
きみ=あなた=あの子
5歳〜今に至る成長とあなたへの問い


独白します。

お飯事をするよりも凹凸に泥を敷き詰めてクッキーを、
皆とお遊戯会をするよりも独り壺作りを、
そんな少し変わった女の子、それが私だった。
そんな私のすきなものは父から聴く、宇宙や花に昆虫に、
そしてなにより日本の物語。
わたしが5歳になった時、父ははじめて歴史を話してくれた。
それはこの国が負けた話。
小さいわたしには衝撃で、理解もできなかったが持った感情をみんなに伝えたくて調べていった。そしたら案外楽しくて、気が付けば少し変わった女の子は歴史が好きな変な子になった。
小学校に入ってもそれは変わらず、ある時それを気味悪がられて男子トイレに連れて行かれ、本を取り上げ殴ったり蹴られたり。でもそれがよくわかってなくて、わからなかった。わたしには、歴史がいるから大丈夫だった。きっと好きじゃないんだなって思ったし、それならそれで構わなかった。父と母がりこんのはなしをしていても、興味がなかった。
でも、ある時。
唯一私のそばにいてくれた、ともだちがいつものように一緒に痛い思いをしていた頃、私があの子に罪をなすりつけてしまった。あの子はいなくなった。
少し経って少し周りが私を受け入れ、家族もなんとかなった頃。あの子がこの世にいないと聞いた。知らない子から聞いた。あの子は私に、教えてくれなかったのだ私が。私が酷い事をしたから。
その時初めて知りました。私の周りには私を認めて守っていてくれた人が居たのだと。私の罪の重さを。
あの人を殺したのは、わたしなのだと。

あまりにも幼かった私は自身の好きなものに閉じ籠り好きなものだけを見て逃げていた愚者で、気付いた時には既に遅くもう駄目だった。そんな自分を辞めたくて辞めたくて、仕返しをして髪を切って、あの子の夢だったデザイナーを目指した。挫折もあったし、あの子の友達を増やすために人付き合いを研究し友人を作って、あなたの成長した姿を想像で真似てみた。でも、虚しかった。やるたび生きるたび、あなたの大きさを知って挫折するたび君への愛しさは募るばかり。
高校に入ってまた歴史が好きなことで人が離れていったけれど、なんとか美大に受かって。

あれからあなたのことばかり考えている。
ふとした時、れきしの本から目を彷徨わせた時にあなたはわたしの目の前に座り、こちらに微笑んでいるような気がして。もしくは何気ない帰り道、誰かと話している時にその人の影にひっそりと経って優しい眼差しで話を聞いているかもしれない。
もしかしたらと思って辺りを見回すんだ。でも、あなたの姿だけがないの。あなただけなの。
何度も責めて責めて責めて、わたしが歴史を好きなのを辞めていたら、わたしがこんなんじゃなかったら。
考えても考えても、捨てられません。だって、

「すきなものを考えてるあなたがすき」

今でもあなたの言葉が耳から離れてはくれず、呪いのように私に付き纏います。お願いだ、そばにいて欲しい。離れないで。またお話ししよう。
あなたが内緒ねと口許に指先を当て、こそっと話してくれたあなたの秘密。普段無表情で冷たさすらあるあなたの生まれ月に相応しい春ののどけさの様な笑顔にまた逢いたい。
あなたのことをもっと知りたい。
でも。
でもね。
あなたは帰って来やしない。
きっと私に呆れているんでしょう、怒っているんでしょう。
私はあなたに謝らなければならないことばかり。
あなたを失ってから知りました。全部私の罪でした。
あなたが愛しいとしりました。

それでもやっぱりあなたの夢と、そしてわたしの夢を。
そっと追いたい。
あなたと2人でやりたかったこと、どうしても叶えたいんだ。
地域に住む過去と現在と未来の人の心を繋ぎたいんだ、デザインの力で。その地に根付く伝統という良くも悪くもひとの想いを紡いできた歴史を、みんなに広めて好きになって貰いたいんだ。愛して欲しいんだ。
ばかな私。愚弄して欲しい、あなたの愛ある棘が恋しい。
気持ちのいい話ではないし、きみの心根がわからない今、どう思っているのかなんてわからない。ごめんね。
私のエゴだってわかってるよ。でもね、本当なんだ。

だってあなたとむかし、約束した夢だから。



手を合わせ、燻る靄の向こうには、微かに君の匂いがした。

3/12/2023, 3:06:06 PM