『手を取り合って』2023.07.14
彼女とは子どもの頃からの幼なじみだ。家族ぐるみの付き合いをしており、その延長で保育園から今に至るまでずっと一緒にいる。
眩いライトに照らされる舞台の袖。おとめ達の頂点に立って初めての舞台である。
緊張と不安ではち切れそうになっていると、彼女が声をかけてきた。
――大丈夫、案外なんとかなる、余裕余裕。
などと呑気な事を言っていた気がする。彼女はどこまでも彼女で、不安と緊張で爆発しそうな私はあまり話が入ってこなかった。
それでも彼女は、いつものように呑気に笑って私の肩を叩く。
言葉では無いその行動に、いつしか緊張と不安はどこかへ行ってしまった。
カーテンコール。組長に紹介されて、慣れない重みに転びそうになりながら、私はゼロ番へ立つ。頂点のみが許されたその場所。
彼女が同じ重みを背負いながら、微笑んでいる。
一瞬、目が合った。
彼女は「大丈夫」と頷く。
促されるまま、頂点についた事の感謝と今後の意気込みを述べる。
お客様はあたたかく拍手を送ってくれた。
「まだ未熟ではございますが、隣におります彼女と手に手を取って、邁進してまいります。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました」
7/14/2023, 11:39:24 AM