ユキ

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『さよならは言わないで』

玄関のドアを開けた彼は、名残惜しそうに私を見た。彼の背中の向こうに夜が見えた。

「電車、なくなるよ」

わたしは、つとめて明るい顔をする。部屋の奥からテレビの音が聞こえていた。

「やべ。今日、たのしかったよ。それじゃ……」

彼の胸に手を当てた。彼はわかってくれたみたい。

「またな」

「うん、LINEちょうだいね」

笑った顔がかわいい。そして、歩いて行った。

孤独な夜が戻ってくる。でも少しづつ良くなる。これから。

12/3/2024, 3:01:33 PM