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駅前の路地裏、怪しげな光を放つ、占いの機械に百円玉を放り込んだ。
音を立てて吐き出された紙片には、私の運勢がびっしりと書き込まれている。
​「……え、見てこれ!」
​友人と顔を見合わせ、声を弾ませる。
指差した先には、こう記されていた。
​『貴方の寿 は、二十五歳』
​「寿(ことぶき)って、結婚ってことでしょ? 私、あと二年で結婚できるんだ!」
「いいなー! 玉の輿かもよ?」
​私は浮かれた。その言葉をお守りのように大切に財布に仕舞った。

​二年の月日は瞬く間に過ぎ、私は二十五歳の誕生日を迎えた。
その日は雪だった。
鳴り響くクラクション、凍った路面に滑るタイヤの音。
歩道を歩いていたはずの私の視界が激しく回転し、体が地面に叩きつけられる。
​アスファルトの上で、意識が遠のいていく。
宙を舞う財布から、飛び出したあの紙が、舞い散る雪と共に、私の目の前にひらりと舞い降りた。
​薄れゆく視界の中で、私はそれを見た。
​『寿 』という文字のすぐ隣。
あまりにも、あまりにも小さく、それは書き添えられていた​。
『命』という文字。

最後の瞬間、私は理解した。
紙に書かれていたのは、幸せの予言ではなく、人生終了の宣告だった。


『小さな命』


2/24/2026, 12:02:23 PM