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風景 ひとひら 未来図 です


風景

「…少し、淋しいな」
私は今、彼と2人で新幹線に乗っている。
「ごめんね、こっちに来てもらって」
ぼそっと呟いた独り言が聞こえたのか、彼は申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「いいのいいの、わかってたことだもの。それに…」
頭では、こうなることはわかっていた。でも、実際そうなると、淋しさが込み上げてくる。
「今日からは、愛するあなたとずっと一緒にいられるのよ、嬉しいに決まってる」
笑顔を向けると
「俺も嬉しいよ」
安心したように彼も笑った。
私の地元へ出向していた彼と付き合い、彼が戻るタイミングでプロポーズされた。結婚すれば、慣れ親しんだ地元を離れなければならないことがわかっていて、受けたのは私。
「わかっていても、やっぱりダメね」
生まれ育った風景を心に刻むように、流れる景色を見つめたのだった。


ひとひら

「あ、ちょっと止まって」
桜並木をキミと散歩中、キミに呼び止められる。
「え、何?」
足を止め、キミを振り返ると
「少しかがんで」
「?」
訳がわからないまま言う通りにすると、キミは俺の髪に触れ
「はい」
俺の手のひらに、ひとひらの花びらを載せる。
「桜の花びらか」
「うん、髪にのってたから」
ふふっと笑うキミに
「これ、押し花にできないかな?」
提案すると
「できるよ」
「じゃあ頼んでもいい?」
「うん」
桜からのプレゼント。キーホルダーにして、合鍵をつけてキミに渡そうと思うのだった。


未来図

「ねえ、来年の今頃、私たちどうなってるかな」
仲の良い同僚のキミと話していると、そんなことを言われる。
「どうだろう。どうなってると思う?」
「私は、主任になってるといいな」
口に手を当て、キミはふふふと笑う。
「キミならなれそうだよね」
「ありがとう。で、あなたは?」
「俺は…」
俺の理想とする未来図。昇進していれば嬉しいがそれよりも、キミと恋人になっているといいな。と思うのだった。

4/15/2025, 9:40:43 AM