いつの事だったか、もう鮮明には思い出せないけれど、私は昔、神様の街に迷い込んだことがある。
ズラリと鳥居が並んだその先に、手の行き届いた綺麗な社とか、人から忘れ去られてしまったようなボロボロの社とか、小さな社に大きな社……とにかく沢山の建物が建っていた。
幼い頃はそんな不思議な話を両親にしては、2人から「ありえない」と一蹴されたものだ。それからいくらか時間が経って、私もそんな事が絵空事だと認識できるようになった。
けれども、幼い頃の奇妙な思い込みは、私の頭に根強く残っていた。
「絶対に迎えに行くね」
そう言われた気がする。いや、夢のことだから実際には言われてないのだけれども。誰かが私にそう言ったのだ。
学校からの帰り道、私は今日もとある神社の前を通る。去年運良く徒歩30分圏内の志望校に受かって、小学校から今の今まで、約10年間も通ってきた道。
「迎えに来たよ」
耳を掠めた声に私は振り向いた。
今、分かった。あれは夢では無かったらしい。
No.4【遠い日の記憶】
7/17/2024, 10:56:55 AM